連携プロボノ事例集 - プロボノ連携で実現したWebサイト刷新事例：情報発信力強化とその成果

プロボノ連携で実現したWebサイト刷新事例：情報発信力強化とその成果

Tags: プロボノ事例, Webサイト, 情報発信, NPO, 連携

NPOの情報発信における課題とプロボノ活用の可能性

多くのNPOや地域団体にとって、情報発信は活動への理解を深め、支援者を獲得し、社会的なインパクトを広げる上で極めて重要です。しかしながら、限られた人員と予算の中で、効果的な情報発信媒体であるWebサイトを常に最新の状態に保ち、魅力的な内容に更新し続けることは容易ではありません。デザインが古くなったり、情報の整理が追いつかなくなったりすることで、伝えたいことが伝わりにくくなるという課題に直面する団体は少なくありません。

このような状況において、プロボノワーカーとの連携は、専門的なスキルや知見を外部から得る有効な手段となり得ます。Webサイトの構築、デザイン、コンテンツ企画、ライティングといった特定のスキルを持つプロボノワーカーとの連携は、団体の情報発信力を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。

この記事では、プロボノ連携を通じてWebサイトの刷新に成功し、情報発信力を強化した具体的な事例をご紹介します。連携に至った背景、プロジェクトの進め方、得られた成果、そして成功のためのポイントや注意点について詳しく解説します。

事例紹介：プロボノ連携によるWebサイト刷新プロジェクト

ここでは、仮に「地域の子ども向け学習支援を行うNPO法人『未来の翼』」という団体が、プロボノ連携によりWebサイトを刷新した事例を基に説明を進めます。

連携に至った背景：古くなったWebサイトが抱える課題

NPO法人『未来の翼』は、設立から10年が経過し、活動内容も年々拡大していました。しかし、Webサイトは設立当初に制作されたままで、デザインは古く、スマートフォンでの表示にも対応していませんでした。また、活動報告や寄付募集に関する情報が散在しており、訪問者が必要な情報を見つけにくい状況でした。

代表者は、Webサイトを刷新し、団体の活動内容をより魅力的に伝え、支援者やボランティアの獲得、寄付の増加に繋げたいと考えていました。しかし、専従スタッフは少数であり、Webサイト制作に関する専門知識や経験を持つ人材は不在でした。外部の制作会社に依頼することも検討しましたが、予算的な制約から断念せざるを得ませんでした。

そこで、『未来の翼』は、専門スキルを持つプロボノワーカーとの連携に活路を見出しました。

プロボノワーカーの選定と役割

『未来の翼』は、プロボノを仲介するプラットフォームを通じて、Webデザイナー、フロントエンドエンジニア、そしてコンテンツ企画・ライティングの経験を持つプロボノワーカーを募集しました。団体の課題や目指すWebサイトのイメージを明確に伝え、それに共感し、貢献したいという熱意を持つプロボノワーカーとのマッチングを希望しました。

複数の応募者との面談を経て、以下のスキルを持つ3名のプロボノワーカーとの連携が実現しました。

A氏（Webデザイナー）: サイト全体のデザイン、UI/UX設計を担当。
B氏（フロントエンドエンジニア）: デザインに基づくWebサイトの構築、技術的な実装を担当。
C氏（コンテンツディレクター/ライター）: サイト構成の提案、既存コンテンツの整理、新規コンテンツの企画・編集、ライティングサポートを担当。

『未来の翼』側からは、代表者と広報担当のスタッフがプロジェクトの窓口となり、団体の要望や情報提供、進捗確認、フィードバックを担当しました。

連携の具体的なプロセス

プロジェクトは、約6ヶ月間の期間を設定して進行しました。主なステップは以下の通りです。

キックオフ・オリエンテーション: プロボノワーカーとNPOスタッフが集まり、プロジェクトの目的、達成目標、スコープ、役割分担、スケジュール、コミュニケーション方法を確認しました。NPOの活動への理解を深めてもらうため、団体の理念や現状の課題、期待する成果について丁寧に伝えました。
要件定義・サイト設計: NPO側のニーズをヒアリングし、Webサイトの目的、ターゲットユーザー、必要なコンテンツ、機能などを具体的に定義しました。プロボノワーカーの専門知識を活かし、ユーザーフレンドリーなサイト構成や導線設計について提案を受けながら進めました。
デザイン・コンテンツ制作: A氏がサイトデザインの方向性を提案し、NPO側のフィードバックを受けながらデザインカンプを作成しました。C氏は既存コンテンツの棚卸しを行い、不足している情報や新規に作成すべきコンテンツのリストアップ、構成案作成を進めました。
Webサイト構築・実装: B氏がデザインと構成案に基づき、実際のWebサイト構築を進めました。コンテンツはC氏のディレクションのもと、NPO側が準備を進め、適宜プロボノワーカーのサポートを受けました。
テスト・フィードバック: 構築されたWebサイトを、NPO側とプロボノワーカー双方でテストし、表示崩れやリンク切れ、情報の誤りなどをチェックしました。改善点の洗い出しとフィードバックを密に行い、修正を重ねました。
サイト公開・運用引継ぎ: テストが完了した後、新しいWebサイトを公開しました。公開後も小さな修正や調整を行い、プロボノワーカーからNPO側へWebサイトの簡単な更新方法や管理方法について引継ぎが行われました。

コミュニケーションは、定期的なオンラインミーティング（週1回程度）と、チャットツールを活用して行われました。プロジェクトの進捗状況、懸念事項、確認事項などをタイムリーに共有し、認識のずれを防ぐよう努めました。

得られた成果

このプロボノ連携を通じて、『未来の翼』は以下の成果を得ることができました。

Webサイトデザインの刷新: モダンで視覚的に魅力的なデザインとなり、団体の信頼性向上に貢献しました。スマートフォンからのアクセスにも完全に対応しました。
情報発信力の強化: サイト構成が見直され、活動内容や支援方法が分かりやすく整理されました。ブログ機能も整備され、定期的な活動報告が可能になり、情報発信の頻度が向上しました。
アクセス数・滞在時間の増加: 新しいサイトはユーザーにとって使いやすく、関心を引きやすくなったため、サイトへのアクセス数や訪問者の滞在時間が増加しました。
問い合わせ・応募の増加: 活動への問い合わせや、ボランティア応募、寄付に関するアクション数が増加しました。具体的な数値目標を設定していた項目では、目標を達成または上回る結果となりました。
組織内の意識変化: Webサイト刷新プロジェクトを通じて、組織内で情報発信の重要性に対する意識が高まりました。Webサイトの効果的な運用やコンテンツ拡充に向けた体制づくりが進みました。

予算を大幅に抑えつつ、プロのスキルによって質の高いWebサイトを完成させることができた点は、団体にとって非常に大きな成果でした。

成功のポイント

このプロボノ連携が成功した要因として、いくつかの点が挙げられます。

明確な目標設定: プロジェクト開始前に、「なぜWebサイトを刷新するのか」「刷新によって何を達成したいのか（例: 問い合わせ数〇%増加、寄付〇円増加）」といった目標を明確に設定し、プロボノワーカーと共有したこと。
NPO側の積極的な関与: プロボノワーカー任せにするのではなく、NPO側が主体的に要件定義に関わり、情報提供やフィードバックを迅速に行ったこと。団体の活動への深い理解を持つNPOスタッフが積極的に関わることで、より団体のニーズに合った成果物が得られます。
プロボノワーカーの専門性と熱意: 選定されたプロボノワーカーが持つ専門スキルが団体の課題解決に合致していたこと、そして団体の活動への共感と貢献したいという強い熱意を持っていたこと。
良好なコミュニケーション: 定期的なミーティングやチャットツールを活用し、密なコミュニケーションを心がけたこと。疑問点や懸念点をすぐに共有し、解決を図る体制が重要です。
役割分担と期待値調整: プロジェクトの早い段階で、NPO側とプロボノワーカーそれぞれの役割と責任範囲を明確にし、互いのリソースや稼働時間に対する期待値を適切に調整したこと。プロボノワーカーの稼働時間は限られているため、無理のないスケジュール設定が不可欠です。

連携において注意すべき点と学び

一方で、プロジェクトを通じて得られた学びや注意すべき点も存在します。

プロボノワーカーの稼働時間の変動: プロボノワーカーは本業や他の活動と並行して参加しているため、予期せぬ事情で稼働時間が変動する可能性があります。プロジェクト計画には、ある程度の余裕を持たせることが賢明です。
情報提供のタイムラグ: NPO側からの情報提供やフィードバックが遅れると、プロジェクト全体の進行に影響が出ます。担当者を決め、迅速に対応できる体制を整えることが重要です。
成果物の運用引継ぎ: プロジェクト終了後、NPO自身でWebサイトを更新・管理していく必要があります。プロボノワーカーが構築したシステムの操作方法や、簡単な更新作業の手順について、丁寧な引継ぎとマニュアル整備を行うことが不可欠です。可能であれば、プロジェクト期間中にNPOスタッフが簡単な作業を学ぶ機会を設けることも有効です。
期待値の管理: プロボノワーカーは有償のプロフェッショナルとは異なり、あくまで自発的な貢献です。無制限の要求をしたり、過度な成果を期待したりすることは避け、感謝の気持ちを持って接することが良好な関係維持に繋がります。

まとめ：プロボノ連携を次の一歩へ繋げるために

NPOが抱えるリソース不足という課題に対して、プロボノ連携は専門的なスキルを獲得し、組織の課題を解決する強力な手段となります。『未来の翼』の事例のように、Webサイト刷新一つをとっても、プロボノワーカーの力を借りることで、情報発信力を大幅に強化し、団体の活動をより多くの人に届け、共感を広げることが可能です。

プロボノ連携を成功させるためには、団体の課題を明確にすること、プロジェクトの目標とスコープを具体的に設定すること、そしてプロボノワーカーとの間で密なコミュニケーションと丁寧な期待値調整を行うことが重要です。また、プロジェクト完了後の運用体制を見据えた計画も不可欠です。

Webサイト刷新以外にも、広報戦略の立案、デザイン物の制作、事業計画策定、システム導入支援など、様々な分野でプロボノの専門スキルを活用できる可能性があります。まずは自団体の最も解決したい課題は何なのか、そのためにはどのような専門スキルが必要なのかを整理してみることから始めてはいかがでしょうか。この事例が、貴団体のプロボノ活用への第一歩を踏み出すヒントとなれば幸いです。