プロボノ連携で得た成果を組織の成長に繋げる:効果測定と評価活用の実践ポイント
プロボノを活用した専門性の高いサポートは、リソースに限りがあるNPOや地域団体にとって、組織の課題解決や成長を加速させる大きな可能性を秘めています。多くの団体が、プロボノワーカーの専門知識やスキルを活用して、ウェブサイトの構築、広報戦略の策定、資金調達の企画立案など、多岐にわたるプロジェクトを成功させています。
しかしながら、プロジェクトが完了した後に、「期待通りの成果が得られたのか」「その成果をどのように評価し、今後の活動に活かせば良いのか」といった疑問や不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。プロボノ連携を単なる一時的な支援に終わらせず、組織の持続的な成長に繋げるためには、プロジェクトで得られた成果を適切に測定し、評価し、そしてそれを組織内で活用していくプロセスが不可欠となります。
本稿では、プロボノ連携プロジェクトの成果を効果的に測定・評価し、組織の成長に繋げるための実践的なポイントについて解説します。
なぜプロボノ連携の成果測定・評価が必要なのか
プロボノ連携プロジェクトの成果を測定し評価することには、いくつかの重要な理由があります。
まず、プロジェクトの成功度合いを客観的に把握するためです。事前に設定した目標に対してどの程度達成できたのかを定量・定性両面から評価することで、プロジェクトの全体像を正確に理解することができます。
次に、プロボノワーカーへの適切なフィードバックに繋がるためです。彼らが提供した専門性が組織にどのような影響を与えたのかを具体的に伝えることで、プロボノワーカーの貢献を称賛し、今後の連携への意欲を高めることにも繋がります。
さらに、組織内部での成果共有と理解促進のためにも重要です。プロジェクトの成果とそこから得られた学びを組織全体で共有することで、職員や関係者の間に共通認識が生まれ、組織力向上に貢献します。
そして何より、評価結果を今後の活動計画や戦略策定の参考に資することが可能です。何がうまくいき、何が課題として残ったのかを分析することで、次に取り組むべきことや、異なる分野のプロボノ活用を検討する際の貴重な示唆を得ることができます。また、助成元や支援者など外部への報告を行う際にも、具体的な成果を伝えることは信頼性の向上に繋がります。
成果測定・評価の進め方
プロボノ連携プロジェクトの成果測定・評価は、プロジェクト開始前から計画的に進めることが重要です。
ステップ1:プロジェクト開始前の準備
成果測定・評価は、プロジェクトが動き出す前から始まっています。最も重要な準備は、プロジェクトの目標設定と、その目標達成度を測るための成果指標を明確に定めることです。
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目標設定と成果指標の明確化: プロジェクトを通じて何を達成したいのか(目標)を具体的に設定します。その上で、目標達成をどのように測るのかを示す成果指標を明確にします。指標には、数値で測れる定量的なもの(例:ウェブサイトへの月間訪問者数〇%増加、イベント参加者数〇名)と、数値化が難しい定性的なもの(例:広報ツールのデザイン性向上による団体の認知度向上、スタッフのスキル向上による業務効率改善)があります。プロジェクトの性質に合わせて、これらの指標をバランス良く設定することが肝要です。例えば、最終的な目標(KGI:Key Goal Indicator)と、そこに至るまでの過程を測る中間指標(KPI:Key Performance Indicator)を設定すると、進捗管理もしやすくなります。プロボノワーカーとこの目標・指標を共有し、合意形成を図ることも重要です。
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評価方法とスケジュール設計: 設定した指標をどのように測定するのか、具体的な方法を検討します。例えば、ウェブサイトのアクセス解析データ、アンケート調査、関係者へのヒアリング、成果物の品質評価などが考えられます。また、いつ、誰が評価を実施するのか、評価結果をどのように報告・共有するのかといったスケジュールとプロセスも事前に設計しておきます。
ステップ2:プロジェクト完了後の成果測定と評価の実施
プロジェクト完了後、事前の計画に基づいて成果測定と評価を行います。
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設定した指標に基づきデータを収集: プロジェクト期間中または完了後に、設定した定量・定性の成果指標に関するデータを収集します。ウェブサイトのデータ分析ツール、実施したアンケートの集計、ヒアリング議事録の整理、完成した広報物や資料の評価などを行います。
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測定結果を目標と比較し評価: 収集したデータを事前に設定した目標や期待値と比較し、プロジェクトの達成度合いを評価します。数値目標の達成度はもちろんのこと、定性的な成果についても、複数の関係者の意見やプロボノワーカー自身の振り返りなどを踏まえて総合的に評価します。プロジェクトの成功要因や、逆に期待通りに進まなかった点の課題、そこから得られた学びなども抽出します。プロボノワーカーからプロジェクト全体の振り返りやフィードバックを収集する機会を設けることも、評価の質を高める上で有効です。
ステップ3:評価結果の活用
評価は、実施するだけではなく、その結果をその後の活動に活かすことに意味があります。
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組織内での成果共有と報告: 評価結果を組織内で共有します。プロジェクトに関わったメンバーだけでなく、他のスタッフや理事会にも報告することで、組織全体の理解を深め、今後の活動への示唆とします。成果報告会を実施したり、報告書を作成したりといった方法が考えられます。
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改善点の洗い出しと次のアクションへの反映: 評価で明らかになった成功要因を他の活動に活かすとともに、課題や反省点を具体的に洗い出します。そして、これらの改善点を今後の事業計画や別のプロボノ連携プロジェクトにどのように反映させるかを検討し、具体的なアクションプランに落とし込みます。例えば、「広報物のデザインは高評価だったが、配布方法に課題があったため、次回は配布戦略を強化する」といった具体的な改善策を講じます。
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事業計画や戦略の見直し: プロボノ連携で得られた成果や学びが、組織の全体的な事業計画や戦略に影響を与える場合があります。評価結果を踏まえて、これらの計画を見直すことも、組織の持続的な成長には不可欠です。
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外部への成果報告・発信: 得られた成果を、助成団体、寄付者、地域住民、メディアなど、外部の関係者に向けて報告・発信します。プロボノ連携によって具体的に何が変わり、どのような良い影響が生まれたのかを伝えることで、組織の信頼性や活動への理解を深めることに繋がります。これは、今後の資金調達や新たな連携に繋がる可能性も秘めています。
効果的な評価活用のポイント
評価を形式的なものに終わらせず、組織の成長に繋げるためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
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評価結果を「改善のため」に使う: 評価は、誰かを責めるためのものではなく、今後の活動をより良くするための機会であるという認識を組織全体で共有することが大切です。良かった点、悪かった点の両方を正直に評価し、そこから学びを得る姿勢が重要です。
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正直なフィードバック文化を醸成する: プロボノワーカーに対しても、敬意を払いながらも、プロジェクトの成果やプロセスについて正直なフィードバックを行うことで、お互いの学びが深まります。同様に、プロボノワーカーからのフィードバックを組織として真摯に受け止めることも重要です。
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評価結果を具体的なアクションに繋げる: 評価報告書を作成して終わりではなく、評価で得られた知見を基に、次に何をすべきかを明確にし、具体的なアクションプランを実行に移すことが最も重要です。
注意すべき点
成果測定・評価には一定のリソース(時間や労力)が必要となる場合があります。特にリソースの限られるNPOにとっては、評価にどこまで時間や労力をかけるか、事前に計画し、可能な範囲で取り組むことが現実的です。また、定性的な成果の評価は主観が入りやすいため、複数の視点からの評価を取り入れるなどの工夫も有効です。プロボノワーカーに評価への協力をお願いする際は、その目的を丁寧に説明し、負担になりすぎないよう配慮することも大切です。
まとめ
プロボノ連携は、外部の専門的な知見やスキルを組織に取り込む貴重な機会です。そして、その効果を最大限に引き出し、組織の持続的な成長に繋げるためには、プロジェクトで得られた成果を計画的に測定・評価し、得られた学びを組織内で共有し、次の活動に活かしていくプロセスが不可欠となります。
成果測定と評価は、プロボノワーカーへの感謝を形にし、彼らの貢献を正当に評価する機会でもあります。そして、それはまた、今後のプロボノ連携をより実りあるものにするための重要なステップです。ぜひ、プロボノ連携の機会を、単発のプロジェクト成功だけでなく、組織全体の成長に繋げるための評価活動に取り組んでみてください。
本稿が、皆様のプロボノ活用における一助となれば幸いです。