NPOがプロボノ連携を成功させる組織内部の体制づくり:スタッフ・理事会を巻き込む方法
NPOや地域団体では、限られたリソースの中で事業を推進するために、外部の専門的な知識やスキルを活用するニーズが高まっています。プロボノ連携は、企業の従業員やフリーランスの専門家が持つスキルを社会貢献のために無償提供するものであり、このニーズに応える有効な手段の一つです。しかし、外部からのサポートを最大限に活かし、持続的な成果につなげるためには、プロボノを受け入れる側の組織内部の準備と体制づくりが不可欠となります。
本稿では、NPOがプロボノ連携を成功させるために重要な組織内部の体制づくりと、スタッフや理事会といった組織内の関係者を効果的に巻き込むための方法論について詳しく解説いたします。外部との連携に関心はあるものの、内部調整やスムーズな受け入れに不安を感じている方々の参考になれば幸いです。
プロボノ連携成功のために組織内部の体制づくりが重要な理由
プロボノ連携は、単に外部の専門家に業務を依頼するだけでなく、組織文化や既存の業務プロセスに新たな要素を取り込むプロセスでもあります。この変革を円滑に進めるためには、以下の点から組織内部の体制づくりが重要となります。
- プロジェクトの目的と期待値の共有不足: 組織全体でプロボノ連携の目的や目指す成果が明確に共有されていない場合、関係者間で認識のずれが生じ、プロジェクトが想定通りに進まないリスクがあります。
- 組織内での理解と協力体制の欠如: プロボノワーカーが外部から来る存在であるという意識が強く、内部スタッフや理事会が必要な協力や情報提供を行わない、あるいは抵抗感を持つ場合があります。これにより、プロボノワーカーが孤立したり、業務に必要な情報が得られなかったりすることが起こり得ます。
- 受け入れ体制の未整備: プロボノワーカーへのオリエンテーション、日常的なコミュニケーション、進捗管理、成果物の受け入れ・活用プロセスなどが整備されていないと、プロジェクト進行が滞り、双方にとってストレスの原因となります。
- 成果の定着と継続活用の難しさ: プロボノ連携で素晴らしい成果物が生まれたとしても、それを組織内で活用し続けるためのスキルやノウハウが内部に蓄積されない場合、プロジェクト終了後に形骸化してしまう可能性があります。
これらの課題を克服し、プロボノ連携から最大の効果を得るためには、組織が積極的に受け入れ体制を構築し、内部の関係者を巻き込んでいく姿勢が求められます。
プロボノ連携を成功させるための組織内部体制づくり
プロボノ連携の成功に向けた組織内部の体制づくりは、以下のステップで進めることが考えられます。
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連携目的とゴールの明確化・組織内での合意形成:
- どのような課題を解決したいのか、プロボノ連携によってどのような状態を目指すのか(具体的な成果物や達成目標)を組織内で十分に議論し、明確にします。
- 理事会や主要なスタッフ間で目的意識を共有し、連携を進めることへの合意を形成します。これにより、後々の協力体制構築の土台となります。
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担当者の選定と役割分担の明確化:
- プロボノワーカーとの主な窓口となる担当者を明確に定めます。この担当者は、プロジェクトの進行管理、プロボノワーカーとのコミュニケーション、組織内での情報連携などを担います。
- プロジェクトに関わる内部スタッフや理事会の役割(例:必要な情報の提供、意思決定、成果物のレビュー)を具体的に定めます。
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情報共有・コミュニケーションルールの設定:
- プロボノワーカーと組織内部の関係者がスムーズに情報交換できる仕組み(例:共有ドライブ、オンライン会議ツール、チャットツールなど)を準備します。
- 定期的な進捗報告会や、質疑応答の機会を設定するなど、コミュニケーションの頻度や方法に関する基本的なルールを定めておきます。
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プロボノワーカーへのオリエンテーション計画:
- 団体のミッション、ビジョン、事業内容、組織文化、解決したい課題の詳細、プロジェクトの背景と目的、関係者、期待する成果物など、プロボノワーカーが円滑にプロジェクトを開始するために必要な情報を整理し、提供できる準備をします。
- 単なる情報提供だけでなく、団体の活動現場を見学してもらう、主要なスタッフを紹介するなど、団体の「空気感」を伝える工夫も有効です。
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成果物の活用・定着計画:
- プロボノ連携で得られた成果物(例:ウェブサイト、報告書、マニュアルなど)を、組織内でどのように活用していくか、誰が担当するのかを事前に検討しておきます。
- 成果物の維持・更新に必要なスキルが内部に不足している場合は、プロボノ期間中にレクチャーを受ける、簡単なマニュアルを作成してもらうなど、定着のための工夫をプロジェクト内容に含めることも検討します。
スタッフ・理事会を効果的に巻き込むための工夫
組織内部の理解と協力を得るためには、積極的なコミュニケーションと配慮が必要です。
- プロボノ連携のメリットを具体的に伝える:
- 「プロボノのおかげで、普段手が回らない業務を効率化できる」「専門家の視点を取り入れることで、新たなアイデアやノウハウが得られる」「スタッフの専門スキル向上に繋がる可能性がある」など、プロボノ連携が組織やスタッフ、理事会にもたらす具体的なメリットを分かりやすく伝えます。
- 懸念や不安に寄り添い、丁寧に対応する:
- 「外部の人との連携で業務が増えるのではないか」「どのように指示を出せば良いか分からない」「成果が期待外れだったらどうしよう」といった、スタッフや理事会が抱きがちな懸念や不安に対して、正直に耳を傾け、丁寧に対応します。事前の体制づくりやコミュニケーションルールの設定が、これらの不安解消に繋がります。
- 進捗状況を定期的に共有する:
- プロジェクトの開始から完了まで、定期的に進捗状況や小さな成果を組織全体に共有します。これにより、プロジェクトが「自分たちのこと」という意識を高め、関与を促します。
- プロボノワーカーと内部スタッフの交流機会を設ける:
- プロジェクトの会議以外にも、ランチを一緒にする、休憩時間にお茶を飲むといった informal な交流機会を設けることで、プロボノワーカーと内部スタッフの心理的な距離が縮まり、より円滑なコミュニケーションや協力が生まれやすくなります。
- 理事会への適切な報告と説明:
- プロボノ連携の目的、進捗、そして得られた成果について、理事会に定期的に報告し、承認や協力を得るプロセスを丁寧に行います。理事会の理解とサポートは、プロジェクトを組織として推進する上で大きな力となります。
まとめ
プロボノ連携は、NPOが外部の専門知識を活用し、組織の課題解決や成長を加速させる強力な手段です。しかし、その真価を発揮するためには、受け入れ側の組織自身が、目的を明確にし、適切な体制を整え、そして何よりも組織内部の関係者(スタッフ、理事会)の理解と協力を得ることが不可欠となります。
プロボノワーカーは組織の一員としてプロジェクトに参画してくださる大切なパートナーです。外部からのサポートを一方的に受けるという姿勢ではなく、共に課題解決に取り組むチームとして、内部と外部が連携できる環境を積極的に作り出すことが、プロボノ連携成功への鍵となります。
この記事が、プロボノ活用を検討されているNPOや地域団体の皆様が、組織内部の準備を進め、専門家との実りある連携を実現するための一助となれば幸いです。