NPOがプロボノ連携で高める資金獲得に向けた企画力・提案力:専門家との共創事例
資金獲得に悩むNPOの課題とプロボノ連携の可能性
NPOや地域団体が活動を継続・発展させていく上で、安定的な資金の確保は常に重要な課題となります。助成金申請、企業からの寄付、クラウドファンディングなど、資金獲得の方法は多岐にわたりますが、それぞれの機会を捉え、説得力のある企画を立て、魅力的な提案を行うためには、専門的な知識や経験が必要とされる場面が多くあります。
しかし、多くのNPOでは、限られたリソースの中で日々の活動に追われ、資金獲得に向けた企画立案や提案資料作成に十分な時間や専門スキルを割くことが難しい状況にあります。どのように課題を分析し、事業の価値を言語化し、評価者や寄付者の心に響く提案に落とし込むのか、具体的な方法論が分からず、機会損失を招いているケースも少なくありません。
こうした課題に対し、プロボノという専門家の力を活用することが、新たな突破口となる可能性があります。プロボノワーカーは、企業等での実務経験を通じて培った企画力、分析力、構成力、表現力といった専門スキルを持っており、NPOの資金獲得に向けた企画力・提案力向上を力強くサポートすることが期待できます。
プロボノ連携による企画力・提案力向上のプロセス
プロボノワーカーがNPOの企画力・提案力向上に貢献できる領域は多岐にわたります。例えば、以下のような専門性が役立ちます。
- 事業計画策定・見直し: NPOの活動目的やビジョンを明確にし、それを実現するための具体的な事業計画を共に策定・見直すことで、提案の土台となる論理構成を強化できます。
- 課題分析と解決策の明確化: NPOが解決しようとしている社会課題を深く掘り下げ、その原因とNPOの活動がもたらす効果を論理的に整理することで、提案の説得力を高めます。
- ターゲットに合わせたメッセージング: 助成機関、企業、個人など、提案相手の関心や評価基準を理解し、それに合わせたメッセージの構成や表現方法を共に検討します。
- 提案資料の構成・表現: 読み手が理解しやすく、共感を呼ぶような提案書の構成、視覚的に分かりやすい資料作成、効果的なプレゼンテーション方法などについて専門的なアドバイスや実作業支援を行います。
- 収支計画の妥当性検証: 事業に必要な資金と見込まれる成果のバランス、費用対効果など、収支計画の妥当性や実現可能性について客観的な視点を提供します。
これらのスキルを持つプロボノワーカーと連携することで、NPOは単に個別の提案書の質を高めるだけでなく、組織として企画を考え、提案を組み立てる力そのものを向上させることができます。
連携成功事例:企画力・提案力向上による資金獲得への貢献
ここに、プロボノ連携を通じて資金獲得に向けた企画力・提案力を高め、成果につなげたNPOの事例(仮想事例)をご紹介します。
【事例:地域の子ども向け教育格差解消に取り組むNPO A団体】
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連携に至った背景: NPO A団体は、放課後学習支援や体験活動を通じて地域の子どもたちの教育格差解消を目指して活動していました。活動実績は着実に積み上がっていましたが、資金の多くを単年度の助成金に頼っており、安定した運営基盤の確立に課題を感じていました。特に、新たな事業への資金を募る際の企画書や提案書が、活動の熱意は伝わるものの、事業の論理的な構成や社会的なインパクト、費用対効果といった点が弱く、採択に繋がりにくい状況がありました。組織内部には企画や提案書作成の専門知識を持つ人材が不足しており、どのように改善すれば良いか模索していました。
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プロボノワーカーの専門性・役割、選定プロセス: この課題に対し、プロボノ募集サイトを通じて、大手コンサルティングファームで新規事業企画や提案業務の経験が豊富なプロボノワーカーBさんとの連携が実現しました。Bさんは、課題分析、ロジカルシンキング、ドキュメント作成の専門性を持っていました。選定にあたっては、A団体が抱える具体的な課題(企画書の構成、ターゲットに響く表現など)を明確に伝え、Bさんの経験やスキルがそれに合致するかを丁寧に確認しました。また、BさんがA団体のミッションに共感し、活動内容への理解を深めてくれたことも、連携の重要な決め手となりました。
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連携の具体的なプロセス: プロジェクトは、まずA団体の事業内容や課題、今後の展望についてBさんが深く理解するためのオリエンテーションから開始しました。次に、A団体が過去に作成した提案書や事業計画書をBさんがレビューし、課題点を共に洗い出しました。その後、定期的なオンラインミーティングを中心にプロジェクトを進めました。 具体的には、ワークショップ形式でA団体の強みや社会的なインパクトを言語化する作業、新たな事業の企画骨子を論理的に組み立てるブレインストーミング、そして最も重要な、ターゲット(例えば、特定の財団や企業)に合わせた提案書の構成検討と共同作成を行いました。Bさんは、単に提案書を代わりに作成するのではなく、A団体のスタッフが主体的に考え、表現できるよう、問いかけを通じて気づきを促したり、構成のテンプレートや表現のヒントを提供したりすることに注力しました。スタッフが作成したドラフトに対し、具体的な改善点やより効果的な表現方法について丁寧なフィードバックを行いました。
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得られた成果: 連携の結果、A団体は以前よりもはるかに論理的で説得力のある事業計画書・提案書を作成できるようになりました。特に、事業の社会的なインパクトや費用対効果を明確に示す構成や表現力が向上しました。この改善された提案書を用いて複数の助成金に応募した結果、以前は採択されなかった大型の助成金を獲得することに成功しました。また、プロボノワーカーBさんとの共同作業を通じて、A団体の担当スタッフ自身の企画力や提案書作成スキルが飛躍的に向上し、今後の資金獲得活動において大きな自信を持つことができました。組織内に「良い企画・提案」とは何か、という共通認識が生まれたことも重要な成果です。
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成功のポイント: この連携が成功した主なポイントはいくつかあります。第一に、A団体がプロボノに依頼したい課題(資金獲得に向けた企画力・提案力の向上)と、期待する成果(質の高い提案書の作成だけでなく、スタッフのスキル向上)を明確に設定し、プロボノワーカーと事前にすり合わせを行ったことです。第二に、プロボノワーカーBさんが単なる作業代行者ではなく、A団体の伴走者として、スタッフが自ら考え、学べるプロセスを重視したことです。第三に、オンラインツールを活用した定期的なコミュニケーションと、フィードバックの仕組みが機能したことです。最後に、A団体側がプロボノワーカーからのアドバイスを真摯に受け止め、改善に向けて主体的に取り組んだ姿勢も成功に不可欠でした。
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連携において注意すべき点と学び、今後の展望: 注意すべき点としては、プロボノワーカーは無償または低額での支援であるため、NPO側の期待値を適切に管理することの重要性です。全てをプロボノ任せにするのではなく、NPO側がしっかりと準備し、主体的にプロジェクトに参加することが求められます。また、専門用語が多い分野では、プロボノワーカーとNPOスタッフ間での相互理解を深める努力が必要です。 この連携から得られた学びは、外部の専門家の視点を取り入れることで、組織内部だけでは気づけなかった事業の強みや課題を客観的に捉え、それを効果的に伝える方法を習得できるということです。また、伴走型の支援を受けることで、一時的な成果だけでなく、組織の能力そのものを向上させることが可能である点も大きな発見でした。 A団体では、今後も必要に応じてプロボノ連携を活用し、新たな資金獲得手段の開拓や、事業のバージョンアップを図っていくことを展望しています。
まとめ:プロボノ連携で企画力・提案力を高め、持続可能な活動基盤を築く
プロボノ連携は、資金獲得という多くのNPOが抱える共通の課題に対し、企画力や提案力といった本質的な能力向上を通じて、持続可能な解決策をもたらす可能性を秘めています。専門的な知見を持つプロボノワーカーと、NPOの現場の知識や情熱が組み合わさることで、単なる提案書の作成代行にとどまらない、組織全体のレベルアップが期待できます。
本記事でご紹介した事例のように、明確な目標設定、互いの専門性への敬意、そして密なコミュニケーションを心がけることで、プロボノ連携はNPOの資金獲得力を高め、より力強く社会課題解決に取り組んでいくための礎となり得るのです。ぜひ、貴団体の課題解決の一つの手段として、プロボノ連携の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。